18.『希望の灯り』の気になる台詞

18.『希望の灯り』の気になる台詞

こんにちは。

 

前回、『希望の灯り』について書きました。

ブログ→淡々とした映画『希望の灯り』

映画サイト→公式サイト

 

このブログの引用写真は、『GLOBE+』です。

 

 

気になる場面

 

実は心に引っかかる場面があったので、DVDを借りました。

 

マリオン(ザンドラ・ヒュラー)が欠勤が続いた後、主人公クリスティアン(フランツ・ロゴフスキ)が休憩室で再開する場面です。

 

 

マリオンが不機嫌な表情でクリスティアンに接します。

マリオンの態度を見てクリスティアンは「何かあったの? 僕のせいなの?」とマリオンに尋ねます。

マリオンは「短い台詞」をクリスティアンに吐き出すように答え、持ち場に戻っていきます。

 

マリオンのこの「短い台詞」が何であったのか?

 

「なんでも自分のせいにしないで」

 

「なんでも自分のせいにしないで」だったと私は記憶していました。

この台詞を言ったときのマリオンの気持ちは、
『東西ドイツ統合の歪みがこの職場にも表出している。私はそんな職場に居辛いので欠勤していた。しかし、産業の歪みや悲哀を自分一人のせいにしないでね。社会的な大きな問題を、一人ひとりが背負うことは不可能だ。個人の努力で改善できると思っているならば、それはかえって傲慢だ』
と私は受け取っていたのです。

 

しかし、今回DVDで確認しますと、マリオンの台詞は「なんでも自分が原因だと思わないで」でした。

(ドイツ語が分からないので、DVDに貼ってありました日本語訳を見るしか私にはできません。

原作の『夜と灯りと』(クレメンス・マイヤー著、杵渕博樹訳、新潮クレスト・ブックス)で確認してみたいです。

 

【2020年3月18日、追記】

原作を和訳で読みました。

この場面は原作にはなかったです。

原作は11ページと短い物でした。

映画はこの短い原作の世界観を裏切ることなく表現していました。

 

 

「なんでも自分が原因だと思わないで」

 

「なんでも自分のせいにしないで」と「なんでも自分が原因だと思わないで」との違い?

同じことかもしれません。

 

しかし私は違うように受け止めました。

(独りよがりだと批判されそうですが、私のありのままの受け止め方を書きますね)

 

「なんでも自分が原因だと思わないで」。

この台詞を言ったときのマリオンの気持ちは、
『困った事態が目の前にあるとき、あなた(クリスティアン)は自分のせいではないか思う癖があるみたい。でも、ほとんどはあなたに関係ない。仮に関係していても困った事態の原因はあなたのせいではないから罪悪感を持つのは不要だ。気楽に考えてよ』
だと感じました。

 

差異のイメージとしては、
・「なんでも自分のせいにしないで」は「東西ドイツの社会的問題をふくんだ台詞」
・「なんでも自分が原因だと思わないで」は「クリスティアンの認識の癖について指摘した台詞」

 

どちらが、この映画に似合っている台詞だと思いますか?

 

私は、「なんでも自分が原因だと思わないで」が似合っていると思います。

 

 

『希望の灯り』の登場人物たち

 

 

「なんでも自分が原因だと思わないで」が似合っていると思う理由は、登場人物たちの会話にあります。

だれも東西ドイツ統合に関する歪みについて言及していないのです。

唯一の例外が、主人公の指導係りをする先輩社員ブルーノ(ペーター・クルト)が、クリスティアンに語る台詞。

「このスーパーは前は運送の人民公社だった」です。

この台詞に続いて「だから、・・・・・」となるところですが、この映画はここで会話が途切れます。

ゆえに、マリオンもクリスティアンに対して、自分の欠勤の原因を東西ドイツ統合をアレコレと愚痴ることはないのです。

 

 

映画と社会的背景との関係について、トーマス・ステューバー監督がインタビューに答えています。
ご関心をお持ちの方は、『GLOBE+』を。

 

国や制度の解体ではなく、家の解体は解体レスキューまで。

 

 

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