16.『全員死刑』と『エル ELLE』。法と個人

16.『全員死刑』と『エル ELLE』。法と個人

こんにちは。

秋晴れが長く続きますが、朝夕の寒暖差が大きいようで、

風邪気味です。

みなさんは、どうぞお気を付けください。

 

強烈なタイトル名に惹かれて『全員死刑』を観ました。

大満足でした。

なお、『全員死刑』には元となった事件があると聞きますが、事件は一切読まないままで映画の感想を書いております。

 

『全員死刑』(間宮祥太朗主演)のあらすじ

 

(画像引用:Amazon)

 

あらすじをallcinemaから引用します。

 前作「孤高の遠吠」で映画界にセンセーションを巻き起こした注目の新鋭、小林勇貴監督が記念すべき商業映画デビューを飾った衝撃の問題作。

2004年に福岡で発生し、加害者である家族4人全員に死刑判決が下された“大牟田4人殺害事件”を巡る次男の獄中手記を基にした鈴木智彦のノンフィクションをモチーフに、行き当たりばったりに次々と4人もの命を奪っていった一家の狂気の暴走を、“家族のため”とためらいなく凶行に走る実行犯の次男の視点から鮮烈に描き出す。

主演は「トリガール!」「劇場版 お前はまだグンマを知らない」の間宮祥太朗。共演に毎熊克哉、六平直政、入絵加奈子、清水葉月。


首塚タカノリは弱小ヤクザ一家の次男坊。一家は莫大な借金を抱え、上納金も払えず追い詰められていた。そこで小心者の父テツジ、ヒステリックな母ナオミ、小狡い長男サトシは、近所の資産家パトラから金を奪う計画を立てていた。

ところがサトシはその金を独り占めしようと、両親に内緒でタカノリをたき付け、パトラ家へ現金強奪に向かわせる。しかしクスリでハイになっていたタカノリは、居合わせたパトラの次男をいきなり絞殺してしまうのだったが…。

タイトルには死刑とあるものの、警察も検察も裁判所もでてきません

 

単純ですが、このことがこの作品を一番わかりやすく語っていると思います。

もちろん、事件発覚後は警察・検察・裁判所といった方のルールに従い殺人者は裁かたことでしょう。

しかし、この作品においては、法という概念と制度が出現するまでの「出来事=殺人」だけが描かれています。

 

人を殺すということ

 

殺人者は殺している最中、「法」を意識に上らせることがありません。

自分の都合を優先し人を殺します。

後先を考えずに殺します。

快感も不快も感ずることなく殺します。

憎悪で人を殺すわけでもなければ、自分の心に根差す恨みで殺すわけでもありません。

日常のなにげない行為の一つに殺しという行動がはさまれているにすぎません。

それゆえ、殺すという特殊な動作が、あたかも、水を飲む・ボールを投げる・自動車を運転する・カップラーメンを作るという動作と並行関係に置かれているかのように表現されます。

(長男のサトシは殺しに臆病ですが、倫理的に臆病なのではなく、物理的に不快なだけです)

 

この映画を観た時に思いだしたのは、フランス映画『エル ELLE』です。

 

 

『エルELLE』(イザベル・ユベール主演)のレイプ

 

(画像引用:Amazon)

https://social-bar.jp/

 

 

『エル ELLE』の主人公ミッシェルは暴行されます。

通常でしたら、被害者であるミシェルは嘆き悲しみ怒り、自己否定などあらゆるマイナス感情にうろたえるはずです。

しかし、ミシェルは暴行の後それが日常の一コマであったかのごとく、風呂に入りスシを注文します。

暴行を警察にも届けません。

このことは、ミシェルの父親が殺人者として服役し、ミシェル自身がその事件で捜査当局やマスコミの仕打ちに傷つき法の無力さを体感しているからだと思います。
無力さどころか、法や世間がいかに自分を貶めてきたかも知っています。

法はミチェルにとっては「自らを守るもの」ではなく、「あてにならず、むしろ自分に負のレッテルをはるもの」であったのでしょう。

この意味で、ミシェルは法が支配する公明な世間ではなく、法が意味をなさない生々しい世界に生きています。

ここでおさえておきたいのは、エルが生きているのは「法が役に立たない世間」ではなく「法が意味をなさない世界」です。

「無法」ではなく「非法」の中でエルは生きています。

 

『全員殺人者』と『エル ELLE』との共通点

 

共通点は、法よりも自分のやりかたを優先している点です。

違いもあります。
『全員殺人者』は法というものを知りません。
一方、『エル』は法の存在を知ったうえでその無意味さも知っています。
法を守らないのではなく、法で守られることを拒否します。

いずれにせよ、法よりも自分が優先するという点では同じです。
「実存は本質に先立つ」と言ったところでしょうか。

私は法倫理も法哲学も存じません。
いつか入門書くらいは読んでみたいです。

 

 

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