1.余ったチケットを映画館前で売る。


引用元
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=3122

「エルビス・オン・ステージ」

 

知人から数枚の前売りチケットを譲り受けたことがある。

「エルビス・オン・ステージ」、1970年映画のリバイバル上映だ。

なぜチケットを知人が持っていたかは定かではない。

 

エルビスが亡くなったのが1977年。

映画のステージは、きっと1970年のラスベガス公演。

これは、素晴らしかった。

エルビスの身体の動き、甘いマスク、観客との交流、なんといっても歌声。

 

 

これぞ大人だ、と感じたカップル

 

映画に酔った私は、映画館の前に立って呼びかけた。

「チケット余ってます。前売り料金でお分けしますよ」。

私と同じ感動を安い値段で味わってほしい、チケットを無駄にしたくない、という一心だった。

ある女性が「じゃあ、2枚もらおうかしら」と声をかけてくれた。

そばには男性もいたので、カップルで鑑賞するのだろう。

チケットを渡した瞬間に映画館からマイクの声が聞こえた。

「チケットを売買することは禁止されています。すぐにおやめください」。

最初は、なぜ映画館がそんなことを私に言ったのか理解できなかった。

しかし、すぐに「そうか、これがいわゆるダフ屋行為というものなのか」と自分のことを悟った。

カップルには「チケットどうぞ。無料で結構です」と言って、チケットを差し上げた。

そして、私はすぐに映画館から離れた。

数十秒経っただろうか。

私を追いかけてきてくれたのだろう。

「どうぞ料金を受け取ってください」と女性の声。

そばには、男性。

男性は厚手のコートで堂々とした体格と穏やかな顔、女性は長い髪と笑顔。

「いえ、結構ですよ」

と言ったものの、

「でも、あなた困るでしょ。取っておきなさいよ」と女性。

結局、お礼を言って2枚分のチケット料金を受け取った。

そして、二人が映画館の方へ向かうのを姿が見えなくなるまで見送った。

親切な方がいるものだなあという気持ちと共に、自分が大人になったらこの二人のような大人になりたいという気持ちが沸き上がった。

そして、「エルビス・オン・ステージ」を二人で楽しんでほしいと願った。

 

 

新宿か銀座の少し街はずれの映画館だった。

 

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